北欧の家具、落ち着いた街並み、充実した福祉。そんなスウェーデンのイメージを揺さぶったのが、ギャングの銃撃や住宅への爆発物攻撃でした。
2025年7月の前回記事「移民政策が招いた治安悪化?スウェーデンの現実と失敗からの教訓」では、受け入れ態勢や社会統合の課題、日本への教訓を考えました。それから約1年3か月。状況には、見逃せない変化が起きています。
銃撃も爆発事件も、大幅に減っているのです。ただし、「移民制限で問題は解決した」と言い切れるのでしょうか。今回は、データと残る課題の両方から、スウェーデンの現在を見ていきます。
スウェーデンが移民を受け入れた背景
戦後、産業が成長するスウェーデンには働き手が必要でした。フィンランドなどから移住した労働者は、経済を支えました。その後、移民の中心は難民とその家族へ移っていきます。戦争や迫害から逃れた人を守る姿勢が、国の政策を特徴づけるようになりました。経済上の必要性と、人道的な責任。その両方が背景にあったのです(移民政策研究所)。
1975年には、移民・少数者政策の理念として平等、選択の自由、協力が掲げられました。社会の一員として平等に暮らしながら、母語や文化も維持できるようにする考え方です。多様な人々が共に暮らす社会を目指す、理想のある政策でした(スウェーデン議会)。
その受け入れ態勢を大きく揺さぶったのが、2015年の難民危機です。シリア内戦などを背景に、約16万3,000人が庇護を申請しました。これは全員が難民認定された人数ではありません。それでも、人口規模に対して非常に多くの人が到着し、自治体は住居や生活支援の確保に追われました(スウェーデン移民庁)。
人を迎える判断と、迎えた後の暮らしを支える準備。その二つを同じ速度で進められるかが、問われたのです。
銃撃も爆撃も半減――何が変わった?
最新の警察統計を見ると、2026年1~9月の銃撃は61件。前年同期の136件から約55%減りました。爆発事件も158件から76件へ、約52%減っています。暫定値ではありますが、改善は数字に表れています(スウェーデン警察)。
凶悪犯罪は減っているということですが、減少率だけを見て「もう安全になった」と判断するのは早計です。

警察の2025年推計では、犯罪ネットワークで活動する人は約1万7,500人でした。海外にいる幹部の逮捕など成果が出る一方、組織の基盤は残っています。推計方法も変更されており、前年との単純比較には注意が必要です(スウェーデン警察・犯罪ネットワーク報告)。
また、暴力の減少を移民制限だけの成果と断定することはできません。捜査や国際協力、犯罪の未然防止も進んでいます。入国する人を減らす政策と、国内に存在する犯罪組織を抑える対策は、それぞれ評価する必要があります。
移民の第2世代にも残る犯罪リスク――受け入れだけでは統合は進まない
外国にルーツを持つ人が、犯罪容疑者として登録される割合は高い。しかも、その差は移民本人だけでなく、スウェーデンで生まれた第2世代にも見られます。
犯罪防止評議会Bråの2021年報告では、本人と両親がスウェーデン生まれの人を基準にすると、犯罪容疑者として登録される割合は外国生まれで約2.5倍、両親が外国生まれの国内出生者で約3倍でした。これは有罪判決の割合ではなく、2015~2018年の犯罪容疑への登録を比較した数字です。

ただし、集団の条件は同じではありません。第2世代には若者が多く、一般に若年層は高齢層より犯罪容疑者になりやすいため、年齢構成が差の大きな部分を説明します。所得や教育などの違いも考慮すると、差は縮小します。つまり、出自だけでなく、年齢や生活条件が関係しているのです。
それでも、国内で生まれ育てば、社会への統合が自然に進むとは限らないという問題は残ります。同報告では、2007~2018年に容疑者となる割合は各集団で全体として低下しましたが、第2世代では殺人・殺人未遂の容疑者となる割合が上昇していました。犯罪全体の減少と、深刻な暴力犯罪の悪化は同時に起こり得ます。
この研究だけで、移民受け入れが犯罪増加を引き起こしたとは断定できません。しかし、文化や言語の異なる人々の移住により、社会システムや国民の生活に影響を及ぼしたことは確かです。入国時の審査に加え、次の世代が学校や仕事を通じて社会に参加できているかまで検証する。移民政策には、そこまでの責任が必要です。
SNSで暴力の実行役を募集――ギャング犯罪は地域の外へ
従来、警察が重点的に見てきたのは「脆弱地域」でした。社会経済的な困難があり、犯罪者が住民の生活に影響を及ぼしている地区です。しかし警察の2025年報告は、犯罪ネットワークのない小さな町の若者も、重大な暴力事件に関与するようになったと指摘しています(スウェーデン警察・地域の状況報告)。

その仕組みが「暴力のサービス化」です。犯罪組織がSNSや暗号化されたメッセージサービスを使い、暴力を振るう実行役を募集し、犯行を計画します。地域の人間関係を通じて組織に入るだけでなく、オンラインで犯罪に引き込まれる経路ができたのです。指示や募集は国境も越えるため、スウェーデン警察は欧州各国と共同捜査を進めています(スウェーデン警察・国際共同捜査Grimm)。
募集する側、指示する側まで捜査し、若者への接触を断つ必要があります。銃撃件数が減っていても、この勧誘経路が残る限り、犯罪組織が活動を続ける余地は残ります。
日本ではトクリュウ、東南アジアでも同様の組織犯罪が拡大していますが、世界で同時進行しているのだと思います。
受け入れの条件は、どこまで厳しくなったか
移民政策の厳格化も進んでいます。2026年1月から、一定の条件を満たす人が自発的に帰国する場合、成人1人につき35万クローナ(約550万円)の支援を申請できるようになりました(スウェーデン移民庁・帰国支援)。
6月には、市民権取得に必要な居住期間が原則5年から8年に延長され、生計維持や言語・社会知識の要件が導入されました。10月には、庇護申請者の滞在地域や所在確認に関する新しい規則が施行されています(スウェーデン移民庁・市民権、同・新受入法)。

ただし、移民全体が「純流出」に転じたわけではありません。2025年は入国・転入が約8万9,400人、出国・転出が約7万7,500人で、約1万2,000人の流入超過でした(スウェーデン統計局)。
9月の総選挙では中道左派側が僅差で多数を得ましたが、10月上旬も組閣交渉が続いています。今後の政策を確定事項として語れる段階ではありません(ロイター)。
誰のための移民受け入れなのか
日本政府は人手不足を理由に、技能実習生の受入れを拡大しています。百歩譲って誰を何人くらい受入れるのかの議論はあっても良いと思いますが、その前になぜ外国人労働者受け入れなのかに納得がいっていません。
英国予算責任局(OBR)の2024年試算では、低賃金が続く移民は、平均的な賃金を得る移民より長期的な財政収支が不利になります。一方、Penn Wharton Budget Modelの2026年分析は、高度な理工系人材の受け入れ拡大が米国の経済と財政を改善すると推計しています。
出入国在留管理庁の公表データによると、2021年から2025年までの技能実習生の累計失踪者数は36,386人で、行方不明が6,609人です(法務省)。多くの実習生は母国での多額の借金を抱えて来日しますが、低賃金や職場環境に耐えかねて失踪します。失踪後は在留資格を失うため正規雇用から排除され、銀行口座や住居も確保できません。

この極限状態のなか、SNSを通じて悪質なブローカーや犯罪組織と接触します。「高収入」の誘い文句で集められた彼らは、不法滞在という弱みを握られて脅迫され、他に生きる手段がないまま、家畜窃盗や闇バイトによる強盗の実行犯へと巻き込まれていきます。
スウェーデンのギャングが増える構造と同じです。はっきりしていることは、移民ビジネスは儲かるということです。両国の政府、政治家、NPO、ブローカーなどが利権を求めて群がり、それを国民が税金や社会保障、治安の悪化という形で負担させられているのです。
私たちに直接できることは少ないですが、自分の利益を優先する政治家や団体を退場させることです。やはり選挙に行くしかありません。
最後までお読みいただきありがとうございました。
