アメリカを覆う「超加工食品」の現実
近年、アメリカでは食品をめぐる議論が大きく変わりつつあります。政治的立場を超えて、多くの人々が問題視しているのが「超加工食品(Ultra-Processed Foods:UPF)」です。
パッケージに入ったインスタント食品、スナック菓子、甘味飲料など、スーパーの棚に並ぶ多くの商品がこれに該当します。
現在、アメリカ人の摂取カロリーの約半分、子どもに限れば約60%がこの超加工食品から来ているとされています。
こうした食生活の変化とともに、肥満や慢性疾患の増加が深刻な社会問題になっています。アメリカでは成人の約70%が肥満または過体重とされ、糖尿病、心疾患、脂肪肝などの疾患が急増しています。
こうした状況の中進行する、トランプ政権の健康政策を探ってみたいと思います。
異色の共闘:ケネディ厚生長官と元FDA長官
この問題に強い危機感を示しているのが、アメリカ保健福祉長官のロバート F. ケネディJr.厚生長官です。彼は至るところで「超加工食品は私たちを毒している」と発言し、警鐘を鳴らしています。
また、元FDA長官のデヴィッド・ケスラー氏もまた、超加工食品が公衆衛生の危機を引き起こしていると警告しています。

この二人は、ワクチン接種の義務化においては真逆の思想を持ちますが、この問題では共闘する関係にあり話題となっています。
ケスラー氏は1990年代、タバコ企業がニコチン濃度を操作して依存性を高めていた事実を暴いた人物として知られています。
彼は現在、食品業界にも同様の構造が存在すると指摘しています。つまり糖や精製炭水化物、添加物を組み合わせることで、人間の脳の報酬系を刺激し、食べ過ぎを誘発する食品が作られているというのです。
ケスラー氏は問題について、「タバコ問題と同じ規模、あるいはそれ以上の公衆衛生危機だ」と語っています。
問題の核心:FDAの「GRAS」という抜け穴
この問題の背景にあるとされるのが、アメリカの食品規制制度です。1958年に導入された「GRAS(Generally Recognized as Safe)」という仕組みがあります。
これは、専門家の間で安全と認められている成分については、企業が独自に安全性を判断して使用できるという制度です。

もともとは既に広く使われている食品成分を対象とした制度でしたが、現在では多くの新しい成分にも適用されています。その結果、政府の正式な安全審査を受けないまま食品市場に投入されるケースも増えているそうです。
ヨーロッパでは認可されている食品成分は約400種類程度とされていますが、アメリカでは数千種類に及ぶと推定されています。しかも、規制当局自身が正確な数を把握していないとも言われています。
ケネディ長官は、この制度が食品業界によって拡大解釈され、食品添加物が急増したと批判しています。
新しいフードピラミッドと食料政策の課題
ケネディ長官は、食生活の改善を目的とした新しい栄養指針を打ち出しています。従来の栄養ピラミッドとは異なり、加工食品を避け、自然な食材を中心とする食事を重視する考え方です。
新しいフードピラミッドや活動内容は、政府の運営するウエブサイトEat Real Foodで紹介されています。賛同者として、元プロボクサーのマイク・タイソン氏を起用するなど、この問題を解決する意気込みを感じます。

しかし、アメリカの食料政策には大きな矛盾も存在します。食品ジャーナリストでハーバード大学教授のマイケル・ポーラン氏は、政府の農業補助金制度が超加工食品の拡大を支えていると指摘しています。
アメリカではトウモロコシや大豆の生産に巨額の補助金が投入されています。これらの作物は高果糖コーンシロップなど、加工食品の原料として広く利用されています。
これは過去の政権(主に民主党)が加工食品の原料を補助することにより、糖尿病などの生活習慣病を増やす政策をとってきた結果です。この矛盾した構造は是正しなければなりません。
「第二のタバコ訴訟」:食品業界との衝突
超加工食品をめぐる議論は、すでに法廷にも持ち込まれています。サンフランシスコ市の検察官デイヴィッド・チウ氏は、複数の食品メーカーを相手取り、超加工食品が公衆衛生危機を引き起こしているとして訴訟を起こしました。

この訴訟では、食品企業が依存性のある食品を設計し、健康リスクを十分に開示していなかったと主張されています。その構図は、かつてのタバコ訴訟と似ていると指摘されています。
一方で、食品業界は強く反発しています。業界団体のConsumer Brands Associationは、超加工食品には明確な科学的定義がなく、企業はFDAの安全基準に従って製品を製造していると主張しています。
大多数のアメリカ人は食の安全拡大を支持
超加工食品をめぐる議論は、アメリカ社会でも大きな関心を集め、世論調査でも食品の安全規制そのものについては、国民の間で強い支持があることがわかります。
2025年の調査では、アメリカ人の87%が「政府は食品の安全確保のために、もっと積極的に関与すべきだ」と回答しています。
具体的には、食品表示の強化や添加物の規制、農薬の削減などを支持する声が多く見られました。これは共和党・民主党を問わず、比較的広い層で支持されています。

また、ある消費者調査では、79%のアメリカ人が「超加工食品は公衆衛生にとって重大な脅威だ」と感じていると回答しています。さらに、69%の人が食品ラベルを確認して加工度の高い成分を避けようとしているとされています。
また、子どもの健康をめぐる食品規制についても強い支持があります。KFFとワシントンポスト紙が行った保護者向け調査では、85%が食品の着色料や化学添加物の規制強化を支持し、82%が高度加工食品の規制強化を支持しているという結果が出ています。
こうした世論の変化は、すでに市場にも影響を与え始めています。オーガニック食品やホールフードなど、より自然な食品を求める消費者は増えており、食品企業も商品開発や表示の見直しを迫られているようです。
しかし一方で、これらの政策を推進しているケネディ厚生長官の健康改革運動「MAHA(Make America Healthy Again)」に対する評価は分かれています。

2025年の世論調査では、この運動を支持すると答えた人は約30%、反対は約42%という結果も報告されています。支持は保守層で比較的高く、政治的分断の影響を受けていることが指摘されています(脱ワクチンを推進するケネディ長官への抵抗は大きいです)。
さて、多くの日本人は「国産食品は安全」であると信じています。しかし、その裏で政府はせっせと農薬や食品添加物への規制を緩めています。
アメリカで超加工食品への依存度が高いのは、低所得層が顕著であるとされています。日本の場合、私の感覚では所得に関係なく殆どの国民が、多くの加工食品を常食していると思います(地域差はありますが)。
2人にひとりががんになる時代と言われますが、なぜそんなに病人が増えているのかを疑問に思う必要があります。これは国民の食の嗜好のせいではなく、政府の食料政策・システムにより作られた結果だからです。
YouTubeやSNSでは深田萌絵さんや吉野敏明さんなど、日本の食の問題について警鐘を鳴らしている人がおられます。これらの番組では、TVや新聞とは真逆の情報が得られる貴重な存在です。ぜひ視聴をお勧めします。
最後までお読みいただきありがとうございました。
