AIが暴いた日本の大学の白人偏重─“見せかけの国際化”なのか?

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AIが示した「人種の偏り」─画像67万枚の解析結果

AI技術を活用した教育研究が進む中、日本の大学における「国際化」の実態に一石を投じる調査結果が報告されました。

学術誌『Innovative Higher Education』に掲載された研究によると、日本の大学約1,000校の公式ウェブサイト上に掲載されている画像67万枚をAIで解析したところ、白人が実際の在籍率よりも著しく多く登場していることが判明しました。

具体的には、白人の写真が全体の約8%を占めていた一方、実際に在籍する白人学生の割合は1%未満と推定されています。

※様々な大学のトップページのイメージより

さらに、黒人学生や東南アジア出身の学生の画像は、在籍数が白人と同等かそれ以上であるにもかかわらず、圧倒的に少ないという結果も示されました。特にアフリカ系の人物の顔が映っている画像は、白人の画像のわずか4分の1にとどまっていたということです。

この結果は、日本の大学が国際性をアピールする中で、「多様性」のビジュアル表現に偏りがある、という問題提起をしています。

背景にある「白人=国際的」という無意識の刷り込み

では、なぜ白人がこれほど多く使われているのでしょうか。研究者たちは、その背景に戦後日本社会が形成してきた“欧米=先進”“白人=国際的”という価値観があると分析しています。

Photo: 中央区ウエブサイト

日本の高等教育制度は、第二次世界大戦後のアメリカ主導の教育改革によって大きく変化しました。大学制度そのものがアメリカ型に近づき、戦後復興や経済成長を支える知識体系も欧米中心のものに置き換えられていきました。

その結果、「国際化=欧米化」という意識が、アカデミック層や大学関係者の中に深く根づいていったと考えられる、としています。

また、視覚的な表現としても「白人の若者」が持つビジュアルイメージは、「洗練」「グローバル」「未来志向」などのポジティブな印象と結びつけられやすく、大学広報において無意識に選ばれやすい傾向がある、とのことです。

これは「白人のモデル優位」という商業広告の手法、イメージ戦略が大学広報にも波及している可能性を示しています。

白人偏重が生む“見せかけの多様性”とそのリスク

今回の研究では、こうした偏りが単なる「見せ方」の問題にとどまらず、実際に留学生の心理や進学選択に影響を与えかねないという懸念も指摘されています。

研究者たちは、「白人が優遇され、黒人やアジア系の学生が可視化されない状況は、彼らにとって疎外感や孤立感を生む要因になりうる」と述べています。

例えば日本政府は、アフリカ諸国からの留学生誘致のため、奨学金制度などを拡充しています。しかし大学のウェブサイトを見ると白人ばかりで、アフリカの学生は「自分たちは歓迎されていないのでは?」と感じる可能性があります。

こうした心理的バリアは、結果的に日本への進学意欲を削ぎ、長期的には人的ネットワークや外交関係の構築にも悪影響を与えるリスクがあります。

同様に、インドやバングラデシュなど南アジア諸国からの優秀な学生にとっても、白人中心のビジュアル表現は「見せかけの多様性」に映り、大学への信頼感を損なう要因となる可能性があるとされています。

大学と社会が考えるべき「本当の多様性」とは

研究者の一人、筑波大学の柳浦猛准教授は、「我々は通常、文章表現には慎重であるが、イメージには無関心である。イメージ表現には、多様性における無意識の偏見が露呈する」と指摘しています。

今後、大学が国際化を本気で進めていくのであれば、表面的な“見せかけ”ではなく、実態に即した多様性の可視化と、公正な表現方法への意識改革が不可欠と思います。

多様性とは、白人・アフリカ系・アジア系といった“見た目”の差異だけでなく、文化、宗教、価値観、バックグラウンドといった広範な要素を含む概念です。

日本の大学が国際的に評価を得るためには、あらゆる人種・出身の学生が「自分はこの場所に歓迎されている」と感じられる環境づくりが求められます。

そのためには大学の存在意義を見つめ直し、発信すべきメッセージ(ビジュアル含む)は正しいものでなければなりません。

この研究の研究者

実際に調べてみたら…

実際に50校ほどのウエブサイトのトップページを調べてみたところ、確かに「白人の写真」の使用が確認できました。しかし、この調査が指摘するほど多くの白人が登場するという印象ではありませんでした。

始めに、「AIによる画像解析」という手法を100%信用して良いか?という疑問を改めて感じました。

※写真はイメージ

また本調査では、約1000校を調査したとしていますが、実際日本の大学数は796校です。母数を正確に把握せずに調査をしている可能性があるので、67万枚という数字の信憑性も定かではありません

しかし、ウエブサイトの深い階層まで調べると、白人の起用率はさらに増える可能性がありますので、このAIによる調査の主張が間違いとは断定できません

留学生の数が多いネパール、ベトナム、ミャンマーの学生の写真の採用はほぼ無かったのは確かです。この辺は検討の余地があるのかもしれません。

今回安心したのは、国立大学や有名私立に限っては、白人の起用率は全体的に低い傾向があることです。むしろ各大学の強みや特徴を強調し、正直にプロモーションをしているという印象を受けました。良かったです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

Source: Campus Internationalization or Campus Whitening?: AI Analysis of Image Data on Japanese University Websites, White students ‘over-represented’ on Japanese university websites


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