アメリカでは子どもの肥満、若年層にまで広がる糖尿病や自己免疫疾患。私たちの健康を取り巻く環境は、年々深刻さを増しています。こうした問題に対し、アメリカでは「健康革命」が静かに、しかし力強く始まっています。
その中心にいるのが、ロバート・F・ケネディJr.保健福祉省(HHS)長官です。彼の呼びかけに応じ、大手企業や州、そして市民が「自主的な協力」を通じて国を健康にしようと動き出しているのです。
ケネディ氏の行動力の源は、「アメリカ人は先進国の中で最も短命で、医療費が最大」という現実です。

この記事では、ケネディ長官と、この運動を牽引するオクラホマ州のケビン・スティット知事の対談を基に、アメリカで起きている健康ムーブメントの全貌を探ります。
規制なき改革:大手企業が次々と「健康」へ舵を切る理由
ケネディ長官が率いるこの改革の最も驚くべき点は、トップダウンの強制力に頼っていないことです。彼は、「企業が自らの意志で変革の輪に加わっている」と語ります。
「私たちはこの驚くべき協力のほとばしりを目の当たりにしています。規制なしに、です。企業が自ら立ち上がっているのです」
その言葉通り、名だたる大企業が次々と行動を起こしています。
- ネスレ、コナグラ、クラフト: 食品着色料の排除を表明
- タイソンフーズ: 全ての人工着色料を製品から排除済み
- ステーキ・アンド・シェイクなどのファストフードチェーン: 安価な植物性油脂(種子油)の使用をやめ、伝統的な牛脂へと回帰

この動きは食品業界に留まりません。保険業界も、迅速な治療を妨げる一因とされてきた「事前承認(Prior Authorization)」という手続きの大部分を撤廃することに合意しました。これにより、何百万人ものアメリカ国民の医療アクセスが劇的に改善されると期待されています。
強制的な規制ではなく、共通の目標に向けた「協力」を促す、という新しいリーダーシップの形です。ケネディ氏に対する業界からの抵抗を恐れていましたが、今のところ従順に変革を受け入れる姿勢のようです。
州レベルで加速する「MAHA」運動
ケネディ長官が描くビジョンは、州レベルで具体的な形となり始めています。その最前線を走るのが、オクラホマ州のケビン・スティット知事です。
「ほとんどのアメリカ人、そして間違いなく全てのオクラホマ州民は、この『Make America Healthy Again』運動を望んでいます。私たちはオクラホマ州民に健康になってほしいのです」
オクラホマ州では「MOHA(Make Oklahoma Healthy Again)」というスローガンの下、次々と具体的な施策が打ち出されています。
- SNAP(食料支援プログラム)改革: 低所得者層向けの食料支援で、砂糖を大量に含むソーダや菓子類を購入できないようにするよう、連邦政府に要請
- 人工着色料の排除: 知事令により、学校給食や刑務所など、州が提供する全ての食事から人工着色料を排除
- フッ素政策の転換: 後述する健康リスクを考慮し、これまで推奨してきた水道水へのフッ素添加の推奨を公式に取りやめ

この「MOHA」の動きはオクラホマ州だけのものではありません。ケネディ長官によれば、すでに20以上の州で、SNAPの見直しやフッ素添加の中止、あるいは子どもの心身への影響が懸念される「学校での終日スマートフォン利用の禁止」といった同様の改革が進んでおり、まさに全米規模の潮流となりつつあります。
論争の的「フッ素」― IQ低下リスクと個人の選択の重要性
今回の改革の中でも、特に大きな議論を呼んでいるのが「水道水へのフッ素添加)」の見直しです。長年、虫歯予防に効果があるとされてきましたが、ケネディ長官は最新の科学的知見に基づき、そのリスクに警鐘を鳴らします。
歯科医からは「虫歯が増えるのではないか」という懸念も聞かれます。しかし、長官は「フッ素を禁止したヨーロッパでは、虫歯の有意な増加は見られなかった」と指摘。それ以上に、看過できないリスクがあると言います。
国の毒性プログラム(NTP)の報告によれば、水中のフッ素濃度とIQの低下には直接的な逆相関関係があり、ごくわずかな量でもIQの低下を引き起こすと主張します(賛否は二分)。
特に、母親を通じて摂取する胎児や乳児は、虫歯予防の恩恵を全く受けずに、神経系への悪影響というリスクだけを負うことになります。
さらに、フッ素は甲状腺の石灰化を招き、骨密度を低下させる可能性も指摘されています。「アメリカの女性の8人に1人が甲状腺に問題を抱えている」という現状も、こうした化学物質への暴露と無関係ではないかもしれません。
今の時代、フッ素は歯磨き粉や洗口液で十分摂取できるため、わざわざ「飲む」必要はない、というのが彼の主張です。
テクノロジーが拓く未来:ウェアラブル端末で自分の健康の主役になる
この健康革命は、単に有害なものを避けるだけではありません。ケネディ長官は、テクノロジーを活用して「個人が自分の健康の主役になる」ことを積極的に推奨しています。
その代表例が、腕や指に装着するウェアラブル端末です。特に、血糖値を持続的に測定する「グルコースメーター」は、私たちの食生活に革命をもたらすと説明しました。
Wearables put the power of health back in the hands of the American people.
— Secretary Kennedy (@SecKennedy) June 24, 2025
We’re launching one of the largest HHS campaigns in history to encourage their use—so every American can take control of their health, one data point at a time.
It’s a key part of our mission to Make… pic.twitter.com/H2ZY9NiTfN
例えば、「健康に良い」と信じて食べていたヨーグルトで、実は血糖値が急上昇した。あるいは「タンパク質(ステーキなど)を先に食べてからデザートを食べると、血糖値の急上昇(スパイク)が抑えられる」など、個人の「健康の法則」を発見できるとのことです。
これまで専門家任せだった健康管理を、テクノロジーにより個人の手に取り戻すのが彼の主張です。一方、個人情報などプライバシーのリスクを懸念する声もでています。
“食は薬” ― 自分の健康は、自分が決める
ケネディ長官とスティット知事が進める「MAHA運動」。その根底には、彼らが長年推進する「食は薬である(Food is Medicine)」という信念と哲学にあります。
政府が一方的に規制するのではなく、企業が自ら変わり、州がそれを後押しし、そして個人が自らの健康を管理する。私たち一人ひとりが「自分の健康の主役は、自分である」という当たり前のことを思い出すきっかけを与えてくれます。
確かに我々の身体には個人差があり、健康の基準は千差万別です。政府の健康保険指導や食事療法などは、すべての人に当てはまるわけではありません。自分の体調や食べ物の影響は、自分が一番よく知っているのです。
食と健康にフォーカスした改革がアメリカで起こるとは、本当に驚きました。「国民の不健康」と食品・科学産業や保険会社の成長とは密接な関係にあります。MAHAがこのまま順調に推進されるかは、消費者の意識にかかっています。
日本の食や社会福祉制度もズタズタの状況ですが、個人の力だけでは改革するに限界があります。トランプ政権を見習い、政府が意識改革と農業や福祉の改革を進めることを希望します。
最後までお読みいただきありがとうございました。
Source:FOX News Clips