韓国人海外移民の実態と挑戦|二世・三世のK-POP活躍と現地社会で直面する課題

アメリカのイミグレーションにいる韓国人家族 エンタメと文化

近年、BTSを筆頭に、韓国系移民の二世・三世がK-POPやエンターテインメント市場で成功を収め、世界的な影響力の拡大と経済発展に大きく貢献をしています。

なぜ彼らがコンスタントに成功するのか、韓国人移民の歴史や背景、移民先や現地での生活の実態について探ってみたいと思います。

※本記事では移民とディアスポラを総称しています(移民=本人、ディアスポラ=本人+子孫)

韓国人海外移民の歴史:なぜ移民が増えたのか?

韓国人の海外移民は、1960年代から本格的に始まりました。当時、韓国は戦争の爪痕が色濃く残り、経済状況も厳しかったため、より良い生活環境や経済的な機会を求めて多くの人々が国外へ移住しました。

政府も積極的に海外労働者の派遣を進め、特にドイツへの看護師・鉱夫派遣、中東への建設労働者派遣が盛んに行われました。

1980年代以降、韓国経済が成長する中で、教育目的やビジネスチャンスを求めた自発的な移住も増え、移民の理由は多様化しています。

私も1988年のソウルオリンピックの時に初めて韓国に行きましたが、その時すでに現地の人たちが欧米を目指す姿を見て、その意欲の高さに「なぜ?」と思った記憶があります。

当時日本はバブル経済の真っ只中で、私は国に対する不満は微塵もありませんでした😓。

一方韓国人は、政治や経済に対する危機感を持っており、将来のために行動を起こす人が多かったのだと思います。

韓国人の移住国トップ3【コリアン・ディアスポラ】

現在、世界に広がる韓国系移民(コリアン・ディアスポラ)は累計約700万人とのことです。単純比較はできませんが、人口が5000万人強なので結数が多い印象を受けました。

主な移住先トップは、アメリカ、中国(以外!)と日本です。英語圏への移住が多い印象でしたが、比較的近隣国への移動が多いことがわかります。

Source:Brilliant Maps

アメリカでは教育、ビジネス、文化活動でのこの二世・三世の活躍が目立ち、韓国系アメリカ人が幅広い分野で社会に溶け込み・影響を与えているようです。

二世・三世のグローバル成功:K-POPとKカルチャーをけん引

いまや韓国系移民の二世・三世は、グローバル社会で活躍する存在となっています。特にエンターテインメント分野でもその勢いは顕著です。

この成功の一番の理由としては、英語圏への移住者が多いことと無関係ではありません。言語や文化的適応スキルが世界への扉を開くハードルを下げ、優れたタレントを生み出す要因となっているのです。

例えば以下のようなアーティストの活動が注目を集めています。

ダニエル:​オーストラリア育ち、NewJeansのセンターとして世界的な人気を博している

スティーヴン・ユァン:​アメリカ育ちの俳優で、映画「ミナリ」でアカデミー主演男優賞にノミネート、ドラマ「ウォーキング・デッド」にも出演

ジェイ・パーク:​アメリカ・シアトル出身の韓国系アーティストで、2PMの元メンバー。現在はAOMGなどのレーベルを設立し、K-POPとヒップホップの架け橋として活躍

ティファニー・ヤング:​アメリカ・サンフランシスコ出身で、少女時代のメンバーとしてデビュー。現在はソロアーティストとしても活動し、国際的な舞台で活躍

エリック・ナム:​アメリカ・ジョージア州出身の韓国系アーティストで、ソロシンガーとして活動。ポッドキャストやテレビ番組のホストとしても知られる

BM:​アメリカ・ロサンゼルス出身で、男女混合グループKARDのメンバー。ソロアーティストとしても活動

マーク・トゥアン:​アメリカ・ロサンゼルス出身で、GOT7のメンバー。ソロアーティストとしても活動し、国際的な人気を誇る

ジョシュア:​アメリカ・ロサンゼルス出身で、SEVENTEENのメンバー。英語と韓国語を駆使し、グローバルな活動を展開

もちろんエンタメ以外の分野でも、多くの韓国系アメリカ人が政界や経済界で活躍しています。

現地社会での生活:社会的な壁と自己アイデンティティの葛藤

実はこれら華々しい成功の裏で、多くの韓国系移民二世・三世の多くは、韓国文化と現地文化の狭間で相当な苦労をしてきたのも事実です。

ある調査では、韓国系アメリカ人の24.2%が人種差別を経験しているとの報告があり、アイデンティティの形成に深刻な影響を及ぼしていることが指摘されています。

表向きには多文化共生を掲げる社会でも、アジア系に対する見えない壁や偏見が存在するケースがあります。就職や昇進の際に不公平を感じる例や、言語や文化の違いによる孤立感も報告されています。

韓国系アメリカ人が起こした痛ましい事件として、以下が話題になりました。

  • 2007年4月、バージニア工科大学で、韓国系アメリカ人の学生が銃撃事件を起こし、32人を殺害、17人に重傷を負わせた後、自ら命を絶っている
  • 2012年4月、カリフォルニア州オークランドのオイコス大学で、元学生の韓国系アメリカ人、が銃撃事件を起こし、7人を殺害、3人を負傷させた

これらの事件は、韓国系アメリカ人コミュニティに深い影響を与え、精神健康、社会的孤立、銃規制などの重要な問題についての議論を促しました。​

移民の受入れが急増する韓国:移民増加率50.9%、OECDで世界2位

話は変わって、韓国は「移民を受け入れる国」としても最近注目されているらしいのです。

韓国統計庁のデータによると、2023年の外国人登録者数は前年比50.9%増加し、OECD加盟国中、移民増加率で世界2位を記録しています。

背景には、少子高齢化による労働力不足、外国人留学生の受け入れ強化、ITや製造業分野での高度人材確保などがあり、韓国は積極的に外国人を取り込もうとしているとのことです。

Chosun Onlineによると、「ほんの1世紀前まで、韓半島は希望を見いだすために脱出しなければならない場所だった」のが、「大勢の外国の若者がK-POPアイドルを夢見て韓国行きの飛行機に乗る」国に変化したということです。

エンタメや芸能には人の心を動かすパワーがあるのはわかりますが、国境を越えた移住を促すほどというのは想像を超えています。

日本の移民の歴史・実態との比較

これまでみてきたように、移民において韓国と日本では歴史も考え方もまったく違います

日本で海外に移住する人と言えば留学や転勤など一時的なものが殆どで、より良い生活を求めて家族ごと海外に転居という話は殆ど聞いたことがありません。

英語圏に限って移民を比較してみると、韓国315万人に対し日本は199万人です。

単位:万人(移民本人+子孫の合計)

移民の数で優劣をつけるつもりはありませんが、平和で安心して暮らせる国が永遠に良い国とは限らないということです。

グローバル資本主義社会において豊かさや革新性で優位になるためには、多民族・多様性に寛容であることが実証されています(例:アメリカのハイテク企業のトップの多くは移民)。

日本の移民の歴史と移住先

  • 明治維新後の経済的困窮や人口増加により、多くの日本人がブラジルやペルーなど南米諸国、ハワイやアメリカ本土へ移住
  • 第二次世界大戦後、日本国内の復興と経済成長により、新たな大規模移民は減少。既存の移民コミュニティへの家族呼び寄せやビジネス目的の移住が続いた
  • 移民先トップ3:ブラジル(200万人)、アメリカ(155 万人)、カナダ(12.9万人)

※いずれも直近の推定値で、ディアスポラ(移民本人+その子孫)を含みます。

まとめ

親世代がリスクを恐れずチャレンジした成果、韓国移民の二世・三世は、世界と直接コミュニケーションできる言語・異文化対応スキルを身に着けました。

一歩を踏み出すかどうかで、その後の人生は大きく変わることがあります。

これから社会を背負っていく若者たちのために、政治家や教育者、大人たちは、タレント(才能)が多く生まれる社会やシステムをどう造るか、を真剣に考える必要があると思います。

これだけ毎日アメリカや中国、その他の国際ニュースを浴びて生活しているのですから。日本だけ変わらなくていい、ということはありません

最後までお読みいただきありがとうございました。

タイトルとURLをコピーしました