2025年、ドナルド・トランプ大統領の2次政権の主要ポストの人選は、色々と注目を集めました
新たな国家情報長官(Director of National Intelligence)に指名されたのは、かつて民主党に所属していた元下院議員、トゥルシー・ギャバード氏/ Tulsi Gabbard(44歳)です。
共和党政権が民主党出身の人物を情報機関のトップに抜擢することは、極めて異例。トランプ氏はなぜ、党派を超えて彼女を選んだのでしょうか。彼女のこれまでの軌跡を探ってみたいと思います。
ハワイ育ちの政治家、そして信念の形成
ギャバード氏は1981年、アメリカ領サモアで生まれ、幼少期をハワイで過ごしました。父はハワイ州議会議員のマイク・ギャバード氏、母は教育活動家で、宗教的にもヒンドゥー教の影響を強く受けています。
そのため、彼女自身もヒンドゥー教徒として知られ、政治家としては珍しく精神的な価値観を公に語る人物です。

学生時代は自然と共に生きるハワイ文化の中で育ち、大学はハワイ・パシフィック大学でコミュニケーション学を専攻。海に囲まれて生活していたため、サーフィンにも親しんできたそうです。
政治への関心は早く、わずか21歳でハワイ州議会議員に当選します。この時点で全米最年少の女性議員として注目を浴びました。
戦場を経験した政治家──「言葉」より「行動」で示す
2003年、ギャバード氏は政治活動を一時離れ、ハワイ州ナショナルガードに自ら志願して入隊しました。その後、イラクやクウェートに派遣され、医療支援・治安維持などの任務に従事。兵士としての経験は、彼女の政治信念を決定づけたと言われています。

戦場で命の重みを知った彼女は、ワシントンでの空論的な外交に強い違和感を抱くようになりました。「戦争を軽々しく語る政治家が多すぎる」として、以後は“アメリカ国民のための外交”を主張しました。
この「現場を知る軍人出身政治家」という姿勢が、後にトランプ政権から信頼を得る基盤になっていきます。
民主党内での孤立と離党──信念を貫いた結果
2012年、ギャバード氏はハワイ選出の連邦下院議員として当選し、民主党全国委員会(DNC)の副議長にも抜擢されました。

しかし、2016年の大統領選を前に党内での確執が生じます。民主党がバーニー・サンダース候補に不利な運営をしていると批判し、副議長を辞任。その後も、党の主流が「イデオロギー優先で、国民生活を置き去りにしている」と発言し、徐々に孤立します。
2022年、ついに彼女は民主党を離党。その理由について「アメリカを分断する政治から距離を置きたい」と述べました。この姿勢が、党派を超えて“信念を貫く政治家”として評価される転機になります。
トランプ氏が見出した「現場感覚と信念」
トランプ氏がギャバード氏を国家情報長官に指名したのは、まさにその“独立性”にあります。アメリカの情報機関は長年、政治的圧力や利害関係の影響を受けてきました。
トランプ氏は2期目の政権で「情報の政治利用を断ち切る」と宣言しており、党派にとらわれない人物としてギャバード氏を起用したのです。

就任演説でギャバード氏は次のように語りました。
「情報機関は特定の政党ではなく、アメリカ国民に奉仕すべきです。
真実を隠すことなく、誤報を恐れず、透明な政府を築いていきます。」
この発言は、民主党・共和党の枠を超えて称賛を集めました。一方で、「トランプ氏に都合の良い人選ではないか」という批判も少なくありません。それでも彼女が信頼されるのは、戦場で培った“現実主義”があるからです。
チャーリー・カークとの交流──保守派への“橋渡し役”
アメリカの保守派活動家チャーリー・カーク氏(Turning Point USA元代表)との関係も、ギャバード氏の転機の一つです。
チャーリーは若者保守層の代表的存在で、彼女を「誠実で勇気ある政治家」と評価していました。ギャバード氏は思想の違いを超えてカーク氏のイベントに登壇し、「言論の自由と国の統合」を訴えています。

カーク氏が亡くなった際には、彼女は追悼のメッセージでこう語りました。
「チャーリーは真実のために戦った。彼の精神を受け継ぐことが、私たちの責任。」
この姿勢が、保守層からの厚い信頼につながり、トランプ政権人事への道を開いたとも言われます。
党派を超えた人事が示す“アメリカ政治の変化”
ギャバード氏の登用は、進歩派の政策コミュニティの一部や沿岸部の有名大学・メディアなどから強い反発を招きました。他方で、越党人事を「分断を超える試み」とみる評価も根強いとのことです。

ギャバード氏は「戦争を止める政治」を掲げてきた現実派であり、同時に、信念を曲げずに党を離れた「孤高の改革者」でもあります。
彼女が今後どのように情報機関を再構築していくのか、その手腕はアメリカだけでなく、世界の安全保障にも影響を与えることでしょう。
バランス思考が主流になる時代へ
トゥルシー・ギャバードという政治家は、既存のくくりでは説明しきれません。リベラルでもなく、伝統的保守でもなく、信念に基づく独立したアメリカ人。その存在は、トランプ政権が目指す“党派を超えた再統合”の象徴でもあります。

今後、アメリカ政治におけるバランス感覚(敢えて中道とは言わない)は、むしろ新しい主流になっていくと思われます。彼女の歩みは、その未来を先取りしていると言え、多くの人が望んでいることだと思います。
ギャバード氏はマーティン・ルーサー・キング牧師の命日(MLK Day)に彼の言葉を引用し、「愛」と「奉仕」を政治理念の核に据える姿勢を訴えてきました。
Facebookでは「愛は敵を友に変える唯一の力」など、MLKの名言を添えた動画・画像を繰り返し投稿しています。
“Love is the only force capable of transforming enemies into friends.”
現在、欧米を中心に実施されている移民兵器や分断拡大政策(日本でも計画が進んでいる)とは対極にある考えであり、個人的に賛同するとともに応援していきたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。