世界の小麦消費は中国・インドが突出し、パキスタン、エジプト、トルコなどの“小麦依存度が高い国”が続きます。
日本の小麦は、国産が約2割弱にとどまり、8割超を輸入に頼る構造が続いています。本稿では最新の国際統計をもとに、世界の小麦消費と日本の比較、輸入依存が高い背景を探ってみたいと思います。
世界の小麦「消費トップ10」+日本の現在地
最新の消費見通しでは、上位は中国、インド、ロシア、アメリカ、パキスタン、エジプト、トルコ、イラン、英国、ブラジルの順が目安です(USDA Applications)。
順位 | 国 | 消費量 (百万トン) | 自給率 (生産) | 輸入依存度 (輸入) |
---|---|---|---|---|
1 | 中国 | 148.0 | 95% | 4.0% |
2 | インド | 112.5 | 105% | 0 |
3 | ロシア | 39.0 | 209% | 0 |
4 | アメリカ | 31.4 | 166% | 10% |
5 | パキスタン | 31.0 | 97% | 5% |
6 | エジプト | 20.0 | 47% | 65% |
7 | トルコ | 19.4 | 98% | 36% |
8 | イラン | 17.0 | 79% | 18% |
9 | 英国 | 15.5 | 81% | 21% |
10 | アルジェリア | 12.5 | 64% | 55% |
日本 | 6.25 | 18% | 88% |
中国は人口が多いとは言え、日本との差が半端ではありませんね。私は、日本ですら相当に小麦を食べているとの認識でしたが、世の中はそれ以上であることがわかりました。
日本の小麦需給トレンド(国産と輸入)
日本の食糧用小麦の総需要はおおむね550〜600万トンで横ばい〜微減です。一方、国産の流通量は1990年代の60〜80万トン台から、近年は90〜110万トンへと緩やかに底上げしてきました(天候で年変動)。
それでも輸入は全体の8割超を占める年が続いており、国産比率は概ね2割弱というのが近年の実態です。
日本の食糧用小麦の輸入先は、アメリカ・カナダ・オーストラリアの3か国が主軸です。

パン用(強力粉)・中華麺用(準強力)・うどん用(中力)など用途ごとに銘柄と等級を組み合わせ、配合して使われています。
飼料用は年により振れますが、近年は豪州産の比重が相対的に高い局面が多く、気象・相場・海上運賃で配分が動きます。
日本が輸入に頼る理由
戦後の出発点:食糧危機と米国からの支援・調達
終戦直後(1952年)の日本は深刻な食糧不足に直面し、GARIOA(占領地域救済資金)などを通じて米国からの食糧支援を受けました。
学校給食も占領政策の一環として再開され、小麦粉や脱脂粉乳など海外からの供給が子どもの栄養源を支えました。1954年には学校給食法が制定され、制度として定着します(Nippon.com)。

1954年に米国で成立したPL480(Food for Peace)は、余剰農産物の対外供与・売却を促す仕組みで、日本も主要な受け手となりました。
米国産小麦の対日輸出は1956年の128万トンから1974年の324万トンへと拡大し、戦後〜高度成長期にかけて米国からの小麦輸入を大幅に増やしています(USDA Apps)。
構造面:国産の制約と安定供給の課題
小麦は用途毎に組合せを変更しての使用が多く、国産はコスト高という理由が大きいと思います。
- 生産の制約:作付面積・単収・梅雨や台風などの気象で年変動が大きく、国産だけで需要全体を安定的に賄うのは難しい
- 品質・用途適合:パン(強力粉)・中華麺・うどん等で求められる特性が異なり、米・加・豪の主要等級を配合して安定品質を確保する必要がある
- コストと安定供給:世界の作柄・海上運賃・為替で価格が振れるため、複数産地の組み合わせでリスク分散を図るのが合理的である

日本は既にアメリカの上客ではない
2000年代〜2010年代前半、日本はアメリカ小麦の最上位クラスの買い手でしたが、メキシコ・フィリピン・韓国などの需要増で、近年の日本の順位は3〜4位に位置する年が増えています(New US Wheat)。
- メキシコ:3.234 Mt(百万トン)
- フィリピン:2.576 Mt
- 韓国:2.426 Mt
- 日本:2.116 Mt
これは日本の需要が劇的に減ったというより、他国の伸びと価格・為替・品種別ニーズの変化が重なった結果とのことです(FAS)。
日本を上回る韓国の小麦消費
今回調べてみて、韓国の小麦の消費量が日本より多いことに驚かされました。
人口が半分以下(5,175万人)ということは、日本の倍の小麦を消費しているということです。なんと韓国はインスタントラーメンの消費量が世界トップクラス(年約77〜79食/人)だそうです。(日本人は年約48食/人)

20年ほど前、韓国に出張で何度か行く機会がありましたが、当時は外食チェーン店が殆どなく、伝統食を常食する優れた食環境だと感心したものでした。
韓国と日本の共通点は、戦後の給食システムの導入です。共にアメリカから大量の小麦を輸入するようになり、米から小麦への移行が拡大しました。
それでも韓国の小麦消費がこれほど進んだのは、ライフスタイルの変化だけでなく、経済的な理由もあるのではと思います。小麦は安く、加工しやすいという特性があり、企業にとっても都合の良い材料ですから。
アジア人はグルテン不耐性が多いので、アレルギーや慢性疾患が増加していることだろう、と隣国人のことが少し心配になりました。
最後までお読みいただきありがとうございました。