風邪で抗生物質、眠れなければ睡眠導入剤、落ち着きがなければADHD治療薬……。いま、アメリカの子どもたちはこれまでになく「薬」が身近にある生活を送っています。
本記事は、ホワイトハウスのMAHAレポートに基づく5回シリーズの第4回として、子どもへの過剰な医療介入と薬物使用の問題点を解説します。
いま、子どもに処方されている薬とは?
MAHAレポートによると、アメリカの子どもたちは以下のような状況にあります。
- 抗生物質の乱用:3歳以下の乳幼児に対する抗生物質の処方率が非常に高く、耐性菌のリスクを高めている
- 精神・神経系の薬剤使用:ADHD治療薬(メチルフェニデートなど)や抗うつ薬、睡眠導入剤が処方されるケースが急増
- 処方薬の多剤併用:1人の子どもに複数の薬が処方される「ポリファーマシー」の状態にある事例も珍しくない

とくに注目すべきは、本来は重症例にのみ使用されるべき薬が、日常的に広く処方されているという現実です。
日本でも「子どもへの投薬」が増えている?
厚生労働省の「医薬品の販売動向調査」などをみても、日本でも小児向けの抗生物質や咳止め薬、アレルギー薬などの処方は依然として多く、「念のための処方」が常態化していると指摘されています。
日本小児科学会の声明では、「ウイルス性の風邪に抗生物質は不要」と再三警告がなされており、「薬=安心」という誤解が根強い文化的背景も問題視されています(関東労災病院)。

日本の開業医の先生の中には、「風邪に抗生剤は有害」とまで強いメッセージを発する方もおられます。一方、2023年の一般人の調査では、抗菌薬・抗生物質はウイルスをやっつける」という問いに対して「正しく回答した人は14.7%でした。
なぜ子どもに薬が過剰に出されるのか?
MAHAレポートでは、以下のような社会的要因が複雑に絡み合っていると分析しています。
- 保険制度による「短時間診療」:医師が患者に十分な説明や観察時間を取れず、「とりあえず薬を出す」構造がある
- 製薬会社によるマーケティング:小児向け医薬品の市場拡大を背景に、医療現場に働きかけが強まっている
- 親の不安と期待:すぐに効果が現れる薬を求め、「出してもらえないと不満」という心理的圧力

つまり、医療者、製薬業界、保護者の三者が無意識に「薬に頼る文化」をつくっているということです。
子どもにとっての“副作用”とは?
MAHAレポートは、薬の副作用だけでなく、医療行為そのものが子どもの発達に及ぼす影響について警鐘を鳴らしています。たとえば:
- 不必要な薬によって腸内細菌バランスが乱れ、免疫機能の発達に支障をきたす
- 精神系の薬剤が脳の発達に影響するリスク
- 「病気の子」というラベリングにより、自己肯定感や社会性の形成に影響
つまり、身体的な副作用に加えて、心理・社会的な副作用もあるということを示しています。
私たちにできること:医療との“健全な距離感”を
子どもが体調を崩したとき、親は「何かしてあげたい」と思います。その気持ちは自然なものです。レポートでは、「薬を使うこと=ケア」とは限らないという視点を持ち、薬に頼らない方法の探索も大事と提案しています。
- すぐに薬に頼らず、生活環境や栄養、運動、睡眠の見直しを優先
- 医師に処方理由や副作用を積極的に質問
- 家庭でできる予防策(手洗い、食生活の工夫)を重視

医療は大切な支えですが、万能ではないため、時に子どもの自然な回復力を妨げることもあるという視点を私たち大人が持つことが、最良のサポートにつながるのではないでしょうか。
MAHAレポートが示すネクストステップ──科学的根拠に基づく未来づくりへ
MAHAレポートは、現在進行形の「子どもの健康危機」に対して、単なる問題提起ではなく、科学的エビデンスに基づく10の研究・政策課題を提言しています。特に注目すべきポイントは以下です:
- 再現性危機の克服と信頼できる基礎研究の推進
(NIHによる再現研究の支援・研究精度の向上) - 小児薬の長期安全性に関する監視体制の構築
(FDAと連携し、産業界依存ではない独立研究の実施) - リアルワールドデータの統合活用とAIによるリスク検出
(医療記録・環境要因・保険請求データなどの連携) - GRAS(一般に安全と見なされる)食品添加物の独立検証
(子どもに対するリスク評価を重視) - 食事介入やライフスタイル改善の大規模実証
(UPF制限・睡眠・光環境などを組み合わせた臨床試験) - 子どもに多く処方される薬の長期的影響研究
(神経発達や代謝系への影響を重視)
さらにこれらの研究推進と並行して、MAHA委員会は2025年8月に包括的な国家戦略の発表を予定しています。
行政だけでなく、民間企業や学術機関、そして国民一人ひとりの理解と行動が不可欠と結んでいます。「子どもの健康を取り戻す」ことで、アメリカの黄金時代を復活させるというケネディ氏の強い意志が感じられます。
With @TheGaryBrecka and @Shaq headed for the @UFC fight in Miami pic.twitter.com/weDXhdsE2b
— Robert F. Kennedy Jr (@RobertKennedyJr) April 12, 2025
↑ケネディ氏(左):シャキール・オニールとUFC(総合格闘技)の試合に向かうところ
日本の農業を含む食と健康についても課題・問題山積で、政府や各省庁への風当たりは益々厳しくなることでしょう。時期政府には、客観的な現状分析と課題解決を速やかに進めて欲しいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
Source: The MAHA Report