「最近、子どもが疲れやすい」「食べ物には気をつけているけど、本当に安全なのか不安」──そんな声をよく耳にします。
2025年2月、アメリカ政府が発表した「MAHAレポート(Make Our Children Healthy Again Assessment)」は、まさにそうした親の不安に正面から向き合う内容が報告されています。

このレポートでは、アメリカの子どもたちが直面する深刻な健康問題の現状を明らかにし、その原因を科学的に分析。今後の対策まで踏み込んだ提言がなされており、私たち日本人にとっても興味深い情報が網羅されています。
MAHAレポートとは?目的と背景
MAHAレポートは、トランプ前大統領の大統領令に基づいて設置された「Make America Healthy Again委員会(MAHA委員会)」がまとめた政策提言書です。
この政策の中心人物は、かねてから「アメリカ人の健康を取り戻す」と訴えていた、保健福祉長官を務めるロバート・ケネディ・ジュニア氏です。
彼が問題視するのは、アメリカの医療費は増大の一途であるのに対し、先進国の中で平均寿命が最低という現実です。ヘルスケア産業の成長に反し、アメリカ人の健康、ひいては国力が損なわれているという危機感です。

そして、将来を担う子どもたちの健康に焦点を当て、国力復活のためのリスク要因を洗い出し、全国レベルでの改革実行を目標にしています。
特に注目すべきは、「子どもの慢性疾患の増加」がかつてないレベルに達しているという点です。レポートによると、アメリカの子どもの40%以上が何らかの慢性疾患を抱えているとされており、その傾向は年々深刻化しています。
アメリカの子どもに起きている異変
レポートが明らかにした最新データは、驚くべきものです。
- 肥満率:1970年代は約4%だったのが、現在は20%を超える
- 2型糖尿病:かつては成人病とされた病気が子どもにも急増
- 発達障害・ADHD・うつ症状:診断数が年々増加
- 軍の入隊不適格者の75%が健康問題に起因

さらに、精神的な健康にも異変が生じています。10代女子の自殺願望は過去10年で60%以上増加しており、「最も病んでいる世代」とも呼ばれる事態となっています。
4つの主要な原因──MAHAの警告
MAHAレポートでは、こうした問題の背景にある要因として、次の4つを特定しています。
- 超加工食品(Ultra-Processed Foods:UPF)の過剰摂取
アメリカの子どもは摂取カロリーの約70%をUPFから得ているという事実。それが栄養不足、肥満、糖尿病などに直結している - 環境中に蓄積する化学物質
農薬、食品添加物、プラスチック微粒子など、子どもが日常的に暴露している化学物質の影響 - 運動不足・スマホ依存などによる行動危機
スマホ時間の増加、運動不足、睡眠不足が子どもたちの心身の発達に深刻な影響を与えている - 医療の過剰化
抗生物質や精神薬の過剰な処方、「治すための医療」が逆に子どもの健康リスクを高めている可能性

日本も「静かな危機」に直面している
これらの問題はアメリカ固有のものではなく、日本でも以下のような現象が進んでいます。
- 共働き世帯の増加とともに加工食品・冷凍食品の依存度が上昇(スポーツ栄養Web)
- 世界有数の農薬使用国であり、規制が緩い*(ProLabo farm)
- 朝食に菓子パン・昼食に冷凍パスタという糖質過多の食生活**(厚生労働省)
- 幼児への抗生物質投与や、ADHDと診断された子どもへの薬物療法の増加(厚生労働省)
*国連食糧農業機関(FAO)の統計によると、日本の農地1ヘクタールあたりの農薬使用量は11.8kgで、アメリカの約5倍、イギリスの約4倍に相当
**厚生労働省の調査によると、男性学童の砂糖の平均摂取量は1日あたり68.7g、世界保健機関(WHO)が推奨する1日25g未満の基準を大きく上回る

日本はアメリカほど消費者の声が大きくないので、食品の安全性が曖昧で選択肢が圧倒的に少ないです。農薬や過剰医療の問題も指摘はされていますが、踏み込んだ議論に発展していません(次期政権に期待です)。
レポートが示すネクストステップ:科学と制度の再構築へ
MAHAレポートでは、子どもの健康危機を社会構造全体の課題と位置づけ、次のような対策が提言されています。
1. 科学研究の独立性確保
企業(製薬、食品、化学)の影響を受けない、公正で中立な研究・調査体制を政府主導でする実施する必要性
2. 分野横断の国家戦略
食品、医療、教育、環境の政策を連携させ、子どもの健康を中心に据えた戦略を策定(縦割り排除)
3. 規制の透明化と企業ロビーの排除
研究資金や政策決定のプロセスを見える化、行政と産業の距離を適切に保つ必要性(天下りの排除)
4. 健康を支える農業の再設計
添加物や加工のための農業ではなく、栄養価の高い本来の食材を育てる農業支援が必要

これらは医療・教育・経済をまたぐ本格的な構造改革ですが、日本にとっても示唆に富む内容です。
親として「今できること」から始めよう
国の制度や社会が変わるのを待つ前に、私たち親ができることもたくさんあります。
- 食品表示を確認し、なるべく添加物の少ないものを選ぶ
- スクリーンタイム(スマホ時間)を家庭で話し合う
- 不必要な薬に疑問を持ち、医師にしっかり相談する
- 安心できる農産物を選び、地元の食を大切にする
子どもの健康を守るために、親は国の健康保険の方針を疑う必要があると思います。結果的に健康保険料が削減できれば、その分他のことにお金を使うことができます。
まとめ:これは“他国の話”ではない
MAHAレポートはアメリカの現状を通じて、「子どもを取り巻く社会の構造的リスク」を明らかにしています。そして、改善策を立てて実行に移そうとしています。

これは決してアメリカだけの話ではなく、日本でもすでに起こっていて、対策が求められる問題ばかりです。
次回は、第2回として「子どもの食生活に潜む問題とは?」について詳しく紹介していきます。ぜひご期待ください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
Source: The MAHA Report