6月8日のDodgers Nationで、野球界の常識を覆し続ける唯一無二の存在、大谷翔平選手のキャリア、特に二刀流としての価値について、長年エンゼルスの番記者を務めるOrange County Register紙のジェフ・フレッチャー氏がその見解を語りました。
大谷選手の打撃と投球、それぞれが持つ意味、そして今後の可能性について、フレッチャー氏は何を話したのでしょうか。探ってみたいと思います。
大谷のユニークさの核心は「二刀流」の組み合わせにあり
フレッチャー氏は、大谷選手を打者としてだけ見た場合、アーロン・ジャッジ選手のような他のエリート打者と比較されるレベルであり、彼の打撃成績は素晴らしいものの、「実際にはユニークではない」と述べています。
なぜなら、野球界には毎年「殿堂入りレベルの打者」と言えるような非常に優れた打者が3人、4人現れるからとのこと💦。

しかし、彼を真に「驚異的」な存在にしているのは、エース級の投手でありながら、同時に非常に優れた打者であるという、二刀流としての組み合わせであるとコメント。
フレッチャー氏は、「これを同時に行う選手は一人もいない」と強調しており、この前例のない組み合わせこそが、彼が他の打者との比較から切り離され、「普通ではない」存在と見なされる理由と説明しています。
困難なリハビリと「どん底」の時期
大谷選手は最初のトミー・ジョン手術(2018年10月)後、2020年シーズン開始時の投球復帰を目指していました。
当初の計画では、打者としてアクティブ登録されながら、マイナーリーグで投手としてリハビリ登板を行うという、彼の二刀流ならではのユニークなルール変更も活用する予定でした。
DHとして試合に出場した翌日にマイナーで投げ、また翌日にはDHとしてラインナップに戻る、という形です。しかし、パンデミックの影響により、この計画通りのリハビリは実現しませんでした。
2020年は空っぽの球場で模擬戦などに登板し、ミニキャンプを経てカムバックしましたが、わずか2度の登板で再び故障(屈筋腱の張り)に見舞われました。
フレッチャー氏は、これが計画通りのリハビリができなかったことと関連があると推測しています。

特に2度目の故障時の、試合途中で球速が急激に低下した様子は「非常に辛いものだった」と振り返ります。この2020年8月の時点で、「彼はもう投手ではないのかもしれない」「もう諦めよう」という声が出始め、これが二刀流キャリアにおける「どん底」だったと感じているそうです。
もしこの時に投球を断念していれば、その後の3年間で見せた「フルタイムの投手とフルタイムのDH」という姿は決して見られなかっただろうと語っています。
前例なき二刀流パフォーマンスの頂点(2021-2023年)
フレッチャー氏は、エンゼルスでの2021年~2023年に大谷選手が見せた「フルタイムの投手とフルタイムのDH」という姿は、「地球上の誰もが野球で見たことのない」ことだったと評しています。
これは「信じられない」「驚異的」なことであり、彼が二刀流として活動できなかった期間を経た今だからこそ、人々が改めてその凄さ、前例のないパフォーマンスを実感する機会になっているかもしれない、と述べています。
試合中にエンゼルスの先発投手がこの日2本目のホームランを打った、といった光景は、当たり前のようでいて、改めて考えればとんでもないことだったのです(そりゃそうだ)。
大谷選手自身の嗜好と「ユニークでありたい」願望
長年大谷選手を取材してきたフレッチャー氏は、当初は彼が本当に好きなのは投球だと信じていたそうですが、今は打撃の方が好きになっていると感じているそうです。
これは、投手としての怪我が続いたことや、毎日打席に立てることが理由かもしれないとし、もしどちらかを選ばなければならないとしたら、打撃を選ぶだろう、と推測しています。

しかし、彼の「究極の選択はやはり両方やること」であり、それは「ユニークでありたい」「他の誰もできないことをしたい」という願望から来ていると考えています。二刀流選手であることこそが、彼にとってのユニークさなのだと結論付けています。
投手としての将来の不確実性
フレッチャー氏は、2度のトミー・ジョン手術後に以前のエリートレベルの投手に戻るのは「本当に難しい」ことだと指摘しています。
2度目の手術後に先発投手として成功した例は、ネイサン・イオバルディ(現レンジャーズ)くらいしかいないと述べています。ウォーカー・ビューラー(現レッドソックス)やジェイコブ・デグロム(現レンジャーズ)といった他の例もありますが、まだ復帰途上だと指摘しました。
※ダルビッシュやグラスノー、ビューラー(共にドジャース)も先発で復帰していますが、手術は1回
Nathan Eovaldi lowers his ERA to 1.78. His 0.75 WHIP leads all qualified starters in MLB. pic.twitter.com/nRVJWdO7cx
— MLB (@MLB) May 11, 2025
大谷選手は「他の誰もできないことをする」ので、驚きはしないだろうとしつつも、以前のレベルに戻れるかどうかは不確実であるとしています。
今後何年二刀流を続けられるかも、復帰後の投球次第で見えてくるものであり、「確実視できるものはない」と述べています。ベーブ・ルース選手も数年で二刀流をやめたように、体への負担から「永遠には続かない」ものだとも語りました。
投球が難しくなった場合、一塁や外野も?
フレッチャー氏は、もし投球がうまくいかなくなった場合、残りの契約期間(7〜8年)において、彼をDHだけに固定するのではなく、ポジション(外野や一塁)で起用する必要が出てくると強く主張しています。DH枠を一人の選手に長年固定することは、チームの柔軟性を奪うからです。
また、大谷選手自身も打席の合間に「何もせずにただ座っているだけでは退屈するだろう」と考えています。彼は「あまりにも優秀なアスリート」であり、エンゼルス時代にはライトや一塁の練習もしていたこと、そしてもし守備を任されれば「それを理解し、非常に上手くこなすだろう」と述べています。
投球という要素がなくなった場合、彼のチームへの貢献方法が変わる可能性を示唆しており、これはまた別の興味深い議論になるだろうと述べています。
クローザー起用論の非現実性
大谷選手をクローザーとして起用すべきだという意見について、フレッチャー氏は「私が彼のメジャーのキャリア全体を通して聞いた話の中で、最もばかげたこと」だと断言しました。
もし9回表に打席に立った後、9回裏に投球するためのウォーミングアップ時間の確保をするのは物理的に不可能、と説明しました。WBCでクローザーを務めた時は、直前のイニングで打席が回ってこなかったことや、リプレイ検証で時間が稼げたといった「運が味方した」状況だったと分析。
また、彼には長い先発投手としての準備ルーチンがあり、これもリリーフ起用が難しい理由の一つだとしています。
まとめ:二刀流の真価と今後の注目点
フレッチャー氏の見解に基づけば、大谷選手の価値とユニークさは、単なるエリート打者であることではなく、エース級の投球と優れた打撃を両立する二刀流である点に集約されます。
そして、現在は打撃に専念しつつも、「ユニークでありたい」という理由で二刀流復帰を着々と進めていることでしょう。
しかし、2度目のトミー・ジョンからの復帰は不確実性があるのは心配ですね。大谷選手がピッチャー以外の守備に就くとすれば、それはそれで大変な話題になると思いました。
大谷選手の「前例なき挑戦」が今後どのように続いていくのか、引き続きその動向から目が離せません。
最後までお読みいただきありがとうございました。
ジェフ・フレッチャー氏は、2022年に「SHO-TIME」という大谷選手の4年間の取材に基づく本を出版しています。