ロサンゼルス・ドジャースの佐々木朗希投手が、右肩のインピンジメント(挟み込み症候群)により故障者リスト(IL)入りしました。今季からメジャーに挑戦している23歳の右腕に何が起きたのか、そして彼の復帰はいつになるのか…。
本記事では、5月にDodgers Nationで配信されたドジャースのデーブ・ロバーツ監督の会見内容と、スポーツ医学の専門家であるジェシー・モリス医師(Dr.Jesse Morris)の見解をもとに、佐々木の現状と今後を詳しく解説します。
成績不振の裏にあった「肩の違和感」
今季の佐々木投手は、防御率4.72、奪三振率15.6%、与四球率14.3%と、MLBの中でも下位に沈んでいました。平均球速も96マイル前後と、日本で見せていた100マイル超えの速球とは明らかに違っていました。
Roki Sasaki heads to the IL pic.twitter.com/zKm1wXHxFY
— Talkin’ Baseball (@TalkinBaseball_) May 14, 2025
ロバーツ監督によれば、佐々木はここ数週間、右肩に違和感を抱えながらも、先発ローテーションが手薄なチーム事情を考え、無理をして登板を続けていたとのことです。グラスノー、スネル、大谷翔平(投手として)、カーショウらが離脱している中で、佐々木にかかる負担は想定以上に大きかったといえます。
ドジャースはアリゾナでの登板後にMRI検査を実施し、右肩にインピンジメントが見つかったことから、彼を故障者リストに登録しました。
ロバーツ監督「100%の状態で戻すことが最優先」
ロバーツ監督は会見で、「今後は佐々木の身体を最優先に考え、完全に治してから復帰させたい」とコメントしました。今回の症状は昨年も経験しているものであり、「深刻な故障ではない」としつつも、慎重な判断が求められる段階にあると述べています。

また、監督は「WBCで見たときよりも身体がやや細くなった印象を受ける」と発言しており、トレーニングやコンディショニングの見直しも視野に入れていると考えられます。
今後は肩の炎症を抑え、筋力を回復させたうえで、再び一軍に復帰させる方針です。マイナーでの調整登板の予定はなく、復帰後は即一軍での起用を想定しています。
モリス医師が語る「肩のインピンジメント」とそのリスク
スポーツ医学の専門家であり、MLB選手の診療経験も豊富なモリス医師は、佐々木の怪我について「肘のトミー・ジョン手術よりも厄介なケース」として、以下のような見解を示しました。

肩のインピンジメントとは?
インピンジメントとは、肩の腱や筋肉が骨にこすれて炎症を起こす症状です。これにより可動域が制限され、痛みやフォームの乱れが発生します。特に投手にとっては非常に重大な障害であり、慢性化を防ぐためには早期の対応が求められます。

原因はフォームの乱れと負担の蓄積
佐々木投手は、登板を続ける中でフォームに“代償動作”が生じていたとロバーツ監督も指摘しています。これは、痛みや筋力低下により本来の動作ができず、別の部位が無理に補うことでフォームが崩れ、さらなる怪我を引き起こすという悪循環を言います。
浜の大魔神・MLBのマリナーズでも活躍した佐々木 主浩氏は、佐々木について「左足を高く上げるモーションは衝撃が強く、MLBの固いマウンドでは膝をやられる」と名球会チャンネルでコメントをしていました。
また、佐々木の決め球であるスプリット系のボール(低回転、強い握り)も、肩への負担が大きい球種とされています。
「英雄にならなくていい」… 無理な登板は危険
モリス医師は、「エンジンチェックの警告灯がついている状態で車を走らせていたようなもの」と表現。軽症のうちに止まっていれば回復が早かった可能性があるものの、無理に登板を続けたことでリスクが増したと警鐘を鳴らしました。
チーム事情とはいえ、今後は「無理をせず、少しでも異常があれば早めに報告する」ことが求められるとしています。
復帰可能性は高いが、焦りは禁物
今回のインピンジメントは軽度であり、適切に対応すれば「3〜6週間の休養で回復する可能性がある」と医師は述べています。ただし、フォーム修正や筋力バランスの再構築を怠れば再発リスクは高まり、長期離脱に繋がる恐れもあります。

肩の怪我は「再発」「球種の制限」「投球スタイルの変更」を招く場合もあり、慎重に経過を観察することが重要です。
ドジャースが佐々木に求める「10月の万全な復帰」
ドジャースにとって、佐々木が5月や6月に中途半端な状態で戻るよりも、プレーオフが始まる10月に万全で復帰することのほうが価値があります。球団もその点を理解しており、焦らせることなく、長期的な成長を視野に入れてサポートしていく構えです。
チームとしては、グラスノーら現在故障者リストの投手の復帰状況を見ながら、佐々木の調整期間を十分に確保するとみられます。
佐々木朗希は終わりではない。むしろ、これからが本番
ネット上では、佐々木の不振を受けて「失敗」と揶揄する声もありますが、今回の怪我がその説明になることが明らかになったことで、むしろ希望が見えてきました。

大事なのは、焦らず、完全な状態でマウンドに戻ることです。23歳という若さとポテンシャルを考えれば、今回の故障はリセットと再構築の機会とも捉えられます。Dodgers Nationのビデオのコメントは、佐々木に対する応援のメッセージで溢れていました。
身体とフォームの両面から準備を整えれば、再び100マイルの速球を武器に世界の強打者たちと堂々と渡り合う日が来るはずです。その時を信じて今は修正に専念して欲しいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。