1月にドイツのニュルンベルクに行ってきました。ミュンヘンから長距離バスでニュルンベルクに移動、天候は霧雨と濃霧が入り混じった感じで視界も悪く、久しぶりの欧州はパッとしない印象でスタートしました。
今回不安に思っていたのは、ドイツの経済停滞と移民問題による混乱、という現実を目の当たりにするかもしれないということです。
車で移動しながら眺める街からも、ホテルの近くを歩き目にする人からも活気は感じられません。この10年で何が起こったのか、探ってみたいと思います。
移民が集中するUberのドライバー
ニュルンベルク市内の移動では、毎日数回タクシー(Uber兼任もあり)を利用しましたが、運転手の多くが移民であるということに驚きを覚えました。
以前のドイツといえば、タクシーはメルセデスで、運転手は清潔で几帳面そうなドイツ人というイメージが強かったからです。
今ドイツでは、タクシー・配車サービス分野における外国出生労働者の比率が非常に高いことが指摘されています。特に都市部では、配車アプリ型サービスが移民労働に強く依存しています。

残念なことに、彼らは運転のマナーも態度も悪く、渋滞する道路を逆走し先頭で割り込んだり、赤信号で停車中に車線変更をするなど、違法行為やズルを繰り返すことが常態化しているようでした(そのような運転手への評価は最低にしました)。
そこには国に対する敬意や誇りなど、微塵もないということは明らかでした。
出典:German Federal Statistical Office (Destatis), Employment by nationality
地域に馴染まなくても働ける環境
ニュルンベルクで乗ったUberでは、運転手は母国語のラジオで音楽を聴き、母国語で通話しながら運転する姿に何度も出会いました。ドイツ語を使わずとも仕事・生活が成立している証左でしょう。
これはUberに限りません。ドイツでは以下のような職種で言語能力をほとんど必要としない移民労働が広がっているそうです。

・フードデリバリー(Wolt、Lieferando等)
・倉庫・物流センターでのピッキング作業
・清掃・ビルメンテナンス
・建設現場の補助作業
・農業の季節労働
・外食産業のバックヤード業務
EU全体で見ても、移民労働者は低〜中技能職に集中しており、言語要件が低い職種ほど比率が高いことが確認されています。
出典:European Commission, Labour market integration of migrants
急変したドイツの人口構成
ドイツの人口は2014年の約8,100万人から、2024年には約8,400万人へと増加しました。しかし、これは自然増によるものではありません。
外国籍人口は2014年の約700万人(人口比約9%)から、2023年には約1,230万人(約14.8%)へと増加しています。
さらに驚いたのが「移民背景人口」です。出生地や親の国籍を含めた統計では、移民背景を持つ人口は約2,300万人に達し、人口の約23%を占めているとのことです。
出典(人口総数・外国籍人口・移民背景):Destatis – Population with a migration background
人はいるのに、街が静かなのはなぜ?
街の静けさは、景気や人口構成だけでは説明できません。その背景には、メルケル政権下で行われた移民政策と、その後の社会的帰結があります。
2015年、メルケル首相は難民流入に直面し、「Wir schaffen das(私たちはやり遂げられる)」と述べ、国境管理を事実上緩和しました。その結果、2015〜2016年にかけて約100万人規模の難民・庇護申請者がドイツに流入しました。
出典:ドイツ連邦移民難民庁(BAMF)
人道的判断として評価される一方で、受け入れ後の統合政策(言語教育、住宅、地域への組み込み)は十分に整備されませんでした。都市部では、人は増えたものの、社会的関係性が広がらない状態が定着していきます。

また、難民流入後の数年間で、外国人関与犯罪の比率が上昇し、特に治安への不安が世論で共有されました。
出典:連邦犯罪庁(BKA)犯罪統計
こうした不安を背景に支持を拡大したのが、右派政党のAfD(ドイツのための選択肢)です。AfDは2017年連邦選挙で得票率12.6%を記録し、近年の世論調査では支持率20%前後に達しています。
出典:German Federal Returning Officer/Politico Poll of Polls
重要なのは、衝突が頻発しているわけではない点です。しかし、共通言語や価値観が形成されないまま共存が続くことで、社会的な活力が生まれにくくなったのは事実のようです。
この「合意なき共存」が、人はいるのに街が静かに感じられる最大の理由、と現地の仕事先の人が説明してくれました。
出典:世界銀行 – GDP growth (Germany)
自国ブランドの車も減少傾向
もう一つ、気付いたことは、路上からドイツ車が激減したという現実です。新車販売台数では、依然としてフォルクスワーゲン・グループが最大シェアを持ちますが、市場シェアは長期的に低下傾向にあります。
2015年、フォルクスワーゲンの新車登録シェアは約36%でしたが、2024年は約30%前後に低下しています。
個人が新車を所有する比率は低下し、都市部ではカーシェアや短期リース車が増えました。これらの車両は、コストや調達の都合から必ずしもドイツ製とは限りません。

さらに、移民や低所得層を中心に中古車需要が高まり、価格重視で外国メーカー車が選ばれるケースも増えています。タクシー、Uberではトヨタのカローラ・ハイブリッドが人気でした。
その結果、新車販売統計では依然としてドイツメーカーが上位にあるにもかかわらず、街の風景からはドイツ車の存在感が薄れたように感じられるようになったのでしょう。
出典:Kraftfahrt-Bundesamt (KBA), New car registrations
分断を固定する住居問題
住宅問題も人種の統合停滞の大きな要因のようです。ドイツの家賃指数は、2010年から2023年にかけて全国平均で約50%上昇、大都市では60〜70%上昇しました。
住宅不足により、移民は中央駅周辺や特定地区に集中します。地理的な固定化は、地域住民と移民の交流を遅延させる結果となります。

多くの移民は自家用車を持たず、低賃金・不安定な職に就いています。通勤先も固定されにくいため、鉄道・地下鉄・バスが集まる中央駅周辺は、仕事・行政・医療・買い物のすべてにアクセスしやすいという合理性があります。
さらに、難民・移民支援団体、低価格スーパー、同郷コミュニティ、宗教施設なども、歴史的にこうしたエリアに集積してきました。
その結果、移民は同じ地域に住み続けることになり、住宅の選択肢が広がらないまま定住化します。一方で、家賃上昇を嫌う地元住民や中間層は郊外へ移動するとのことです。
出典:Destatis – Rent price index
無計画だったのか、それとも意図的か?
ドイツ政府は労働力不足への対応として移民受け入れを拡大してきました。一方で、言語教育・住宅供給・地域統合政策は後手後手でした。
ドイツは長年、職業訓練制度(デュアルシステム)や高い教育水準を背景に、欧州有数の技能国家として成長してきました。女性や高齢者の労働参加拡大、国内人材の再訓練といった選択肢が十分に尽くされたとは言い切れない中で、政府は比較的早い段階から「外部から人を補う」道を選びました。労働市場改革よりも、移民受け入れの方が政治的に即効性があると判断したのです。
移民は増えたが経済は成長せず、社会的な一体感も強まらなかった。しかも、受け入れられた側である移民自身も幸福を感じにくく、批判や不満を抱えている。これは、新たな活力を生むどころか、社会に不満の層を積み増したと見ることもできます。

政府が社会を意図的に混乱させようとしたという確証はありません。しかし、問題が明らかになった後も大きな修正が行われなかったことを考えると、「活力の回復」よりも「現状維持」を優先した判断が積み重ねられたと言えます。
OECDも、ドイツにおける移民統合政策の遅れを繰り返し指摘しています。
あるUberの運転手は、自分の運転するトヨタ車を絶賛し、「僕をトランクに入れて日本に連れてってくれ」と言っていました。ドイツもドイツ車も大嫌いだそうです。日本に来れば、日本を嫌いになるでしょう。
出典:OECD – Indicators of Immigrant Integration (Germany)
日本はまだ間に合うのか?
日本でも労働力不足を背景(大義名分)に、政府や左派が外国人労働者の受け入れが拡大しています。寧ろ誰かに急かされて推進しているようにも見えます。
先ずは、人口が増えても経済も国民の満足度も上昇しないということを冷静に考えて欲しい。労働人材受入れと統合設計以前に、そもそも何のために、の議論を徹底すべきと思います。
目的を欠いたまま人だけを入れれば、ドイツで見た「異様な静けさ」を繰り返すことに他なりません。
社会は壊れる前に、静かになると言われます。ドイツで見たのは、その途中段階だったのでしょうか。この教訓をどう生かすかは、これからの日本の政治判断にかかっています。皆さん、選挙にいきましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。
