スマホ依存が子どもの集中力を低下させる?──アメリカ『MAHAレポート』より(第4回)

食事と健康

「うちの子、最近すぐに注意がそれる」「長く話を聞いていられない」──そんな悩みを持つ親が増えています。
この現象の背景にあるのが、スマートフォンやゲーム機などデジタル機器の過剰使用です。

2024年の調査では、アメリカの13〜17歳のティーンエイジャーの95%がスマートフォンを使用、46%が「ほぼ常にオンラインである」と回答しています(2015年は24%)。また、2021年時点で13〜18歳のティーンは、学校以外のスマホ時間が1日平均約8時間39分に達していたとのことです。

アメリカの13~17歳のSNSアプリ使用率、YouTube、Instagram、Snapchatがトップ3

本記事では、アメリカ政府が発表したMAHAレポート(Mental and Physical Health Assessment)』に基づき、子どもの集中力低下とスマホ依存の関係について、アメリカの現状を探りたいと思います。

集中できない子どもたち──何が起きているのか?

MAHAレポートによれば、以下のような行動や心理的な変化が近年の子どもたちに目立ち始めているといいます。

  • 注意力・集中力の持続が困難
  • 衝動的な行動や感情の爆発
  • 「つまらない」と感じる場面が増え、学習意欲が低下

これらは一見、個性や発達の違いに見えますが、デジタル機器との過剰な接触が神経系の発達に与える影響と強く関係していると報告されています。

SNSと集中力低下の関係──つながりすぎる時代の副作用

特に深刻なのが、SNSや動画アプリの長時間使用です。以下はアメリカの10代を対象としたMAHAレポートの主なデータです。

  • 10代のスマホ使用時間:1日平均7時間超
  • 中学生のSNS使用率:約50%
  • SNSを「やめたいのにやめられない」子どもが増加中

このような「常時接続」の状態が、短期的な刺激に慣れ、深い思考や持続的な集中を妨げているとされます。

6~17歳の7割以上の子どもが、日常的に能動的に運動・スポーツをしないとの調査結果もあり、身体を動かすこととの相関も指摘されています(2024年)。

スマホが脳の集中システムに与える影響とは?

MAHAレポートでは、スマホやタブレットの使用が脳の報酬系や前頭前野の働きに悪影響を及ぼす可能性があると指摘しています。

  • 通知や動画のテンポが速すぎることで、刺激に対する“耐性”が高まり、通常の授業や読書を退屈に感じやすくなる
  • スマホ依存によって、自己制御力(セルフコントロール)や問題解決力が育ちにくくなる

こうした変化は学力だけでなく、人間関係や将来の職業への適応能力にも影響を及ぼす恐れがあります。

スマホと子どもの集中力に関する日本の最新データ

日本でもこの問題は他人事ではありません。文部科学省「令和4年度青少年のインターネット利用環境実態調査」によれば:

  • 中高生のスマホ使用時間は1日平均7〜8時間モバイル研究所
  • スマホ利用が長いほど「自己肯定感が低い」と答える傾向あり
  • SNS疲れ・睡眠障害を訴える子どもが増加

因みに自分専用スマホの利用率は、10歳以上の小学生で72%、中学生で95%、高校生は99%です(こども家庭庁調査)。これをコントロールするのは難しいと思います。

日本の子どもたちもすでに集中力低下とスマホ依存のど真ん中にいるといえるでしょう。

集中力を取り戻すために親ができる3つの習慣

子どもがスマホに依存する背景には、家庭内での習慣や親の接し方も関係しています。MAHAレポートと各種調査結果を踏まえ、以下の3つの実践をおすすめします。

  1. 「使わない時間帯」を家庭内でルール化する
     例:食事中・就寝1時間前はスマホNGなど
  2. 読書や対話、運動などスマホに触れない時間を意識的につくる
     一緒に本を読む、音楽をかける、身体を動かす時間を尊重する
  3. “問題行動”をすぐに病名で判断しない
     まずは生活リズム・睡眠・人間関係を見直すことが優先

まとめ:集中力低下は“子ども個人”の問題ではない

スマホ依存や集中力低下は子ども個人のせいではなく、社会全体でつくられた環境の結果です。

  • 学校でも家庭でもデジタル機器があふれる現代
  • 親も常にスマホに気を取られている
  • 学力や成果を急ぎすぎる風潮

MAHAレポートが伝えているのは、まず大人が「集中できる環境」を取り戻すことから始めるべきだというアドバイスです。

大人だけが好きなだけスマホを使って良く、子どもにだけ「我慢しなさい」と言っても効果はありません。一緒にあるべき姿を話し合い、解決策を見つけるしかありません。

次回のMAHAレポートの報告(第5回)では、「子どもに薬を出しすぎていませんか?」と題し、風邪や発達障害、メンタル問題と薬剤治療の現状について探りたいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。

Source: The MAHA Report

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