ステラ・マッカートニーと聞いて同時に連想するのは、伝説的なバンド「ビートルズ」 のメンバーである父、ポール・マッカートニーの娘ということでしょう。また、彼女はファッション・デザイナーとしても有名ですが、サステナビリティを推進する改革者としての顔も持っています。
自然との距離が近い特別な環境で育つ
ステラは特別な環境で育ったのは両親の存在が大きく、それを「特権」と呼んでいます。彼女の母リンダは動物愛護活動家であり、その影響から幼少期からオーガニック農場で育ち、ベジタリアンとして育てられました。違った視点から世界を見る経験により彼女のアイデンティティーは形作られ、他の人とは違う道を歩む覚悟ができたそうです。

サステナブル・ラグジュアリー活動への使命感と追及
フランスのファッションブランド クロエ のクリエイティブ・ディレクターを経て2001年、ステラは自身の名を冠したブランドを設立します。シンプルで洗練されたシルエットと、高級感のあるサステナブルな素材の使用が特徴ですが、最も特徴的なのは創業当初から続く「レザーやファーを使用しない」という大胆なポリシーです。
“Stella McCartney has never used leather, feathers, fur or skin since day one. By taking this stance, we are proof it is possible to create beautiful luxury products that are cruelty free.“
Source: Stella McCartney
彼女のつくる製品は革新的な素材を取り入れ、サステナブルなファッションの可能性を広げています。製造過程における二酸化炭素排出や水の使用量を最小限に抑える努力を続け、再生ポリエステルやオーガニックコットン の積極的な使用、透明性の高いサプライチェーン管理など、業界をリードする取り組みを行っています。
ファッション界の抱える環境問題に立ち向かう
そしていま彼女の視線は、現在のファストファッション業界による環境への負担問題に向けられています。衣類の生産量は年々増加し、2023年には1億2400万トンもの衣類が生産されました。そして9200トンもの衣類が製造から1年以内に廃棄されているのです。
またファッション業界は、生産過程で大量の水を消費する 世界最大の水利用産業のひとつと言われます。そして最終的にほとんどが廃棄され、化学物質やマイクロプラスチックが環境に放出されるという負のサイクルが繰り返されているということです。

このようにルールのないファッション界に対し、彼女は法規制が必要と考えています。現状はレザーを使わないバッグに30%の関税がかかるなど、善いことをするにはコストがかかり利益を出すのが難しいそうです。でもハンドバッグをつくるために、年間10億匹もの動物を殺すことなんて容認できないということです。

更に彼女は畜産業が森林破壊の主要因であり、穀物や大豆が家畜のために栽培されていることにも疑問を呈しています。そして最終的には消費者が知識を持ち、選択することが大切と考えています。買われなければビジネスも持続可能ではなくなるという中で挑戦を続けています。そして難しいことだけど「誰かがやらなければならない」という姿勢を貫いています。
彼女の両親はステラが生まれたときから、生物や環境の持続可能性について考えてきたそうですが、メディアや世間から嘲笑の対象とされてきたようです。ステラ・マッカートニーでは動物皮革に代わる素材をヴィーガンレザーと呼んでいますが、ヴィーガンという概念を多くの人に理解してもらう必要があるでしょう。強いブランドメッセージは人を惹きつけますが、同じように分断も促進します。彼女は妥協を許さない、真の挑戦者であり改革者だと思いました。
資料: WIRED