韓国の小説を読んでいると社会的困窮者がよく登場します。仕事や住む家を見つけることが難しい社会であることが、色々な場面から伝わってきます。キム・ヘジンの「中央駅」は路上生活者になった青年が絶望の中、同じく路上生活者の「女」と出会い繰り広げられるストーリーです。
顔のない登場人物
青年を始め登場人物の名前、年齢、出身地、人生の背景などは明らかにされません。でもグイグイをストーリーに引き込む力強さがあります。普通の小説だと、どこどこの誰が、何処に住んでて、誰とどうしたという舞台やキャラクターを覚えるのが大変ですが、この作品は人名を記憶する必要がないので、ストーリーに集中することができます😊。

怖いもの見たさと経験のない衝撃
実は普通のホームレスの話であったら、私はこの本を手に取ることはなかったかもしれません。しかし、帯には「ぎりぎりの愛」と書いてあるではないですか。だから興味を持ち、引き込まれたのだと思います。
人生に裏切られ続け、希望もなく、誰も信用しない二人の間に「愛情」が生まれる。それがとても自然に力強く描かれいていて、人間の本質を考えさえられると同時にそのやるせなさに圧倒されました。

望まずに苦しい生活を強いられる人は沢山います。作者のキム・ヘジンさんは自分でソウル駅で見聞きしたことをもとに本作を執筆したとのことです(彩流社ブログより)。社会問題を取り上げたと言えばそれまでですが、ここまでリアルに描写できたのはキム・ヘジンさん自身の危機感と、社会的弱者の声を届けたいという使命感であると思いました。
![]() | 価格:1300円 |

