先日Xを見ていたら、トランプ大統領のメッセージが目に留まりました。
トランスジェンダーの高校生について、カリフォルニア州のニューサム知事を攻撃する内容です。同氏のことをNewscumと呼び(Scumは「クズ」の意、正しくはNewsom)挑発しています。

なぜトランプ大統領は怒っているのか、詳しく探ってみたいと思います。
カリフォルニアの高校大会が全米注目の舞台に
発端は、カリフォルニア州の高校陸上大会にトランスジェンダーの女子高校生、AB・ヘルナンデス選手が出場したことです。
大会当日、会場の外では同選手の出場に反対し、「男子が女子のスポーツに出るな!」と訴える保護者がデモをする光景も報道されました。

これにドナルド・トランプ前大統領が乗っかり、「女子選手への侮辱」と非難し、カリフォルニア州への連邦資金の停止を警告するなど、論争は教育界やスポーツ界だけでなく、政治の場にまで波及しています。
この騒動の背景には、「女子競技における公平性」と「トランスジェンダーの権利」という、今のアメリカ社会の根深い分断があります。
結果、トランス女子選手が2冠達成。大会側は異例の対応
そしてカリフォルニア州で5月31日に開催された高校陸上競技大会の結果、AB・ヘルナンデス選手は走り高跳びと三段跳びの2種目で優勝してしまったのです。
大会主催者であるCIF(カリフォルニア高校体育連盟)は、ヘルナンデス選手の出場をめぐる全国的な論争を受けて、異例のルール変更を行っていました。
「女子ジャンプ種目において、純粋な女子で次点だった選手を“共同チャンピオン”とし、同順位のメダルを授与する」制度を導入したのです。
この対応は、トランス選手の出場権を守りつつも、他方で女性選手の立場にも一定の配慮を示す折衷的な措置とされ、評価と批判の両方を集めています。
彼女の優勝後、会場の外では「Protect Girls Sports(女子のスポーツを守ろう)」と名乗る団体が抗議活動を展開し、「女子競技が脅かされている」と主張しました。
トランプ氏の発言と保守派の反応
トランプ前大統領は、SNSプラットフォーム「Truth Social」にて次のように投稿しました。
「男子としては平均以下の選手だった者が、女子に転向したとたんに圧倒的な強さを見せる。こんなことは女性と少女に対する侮辱であり、不公平だ!」
この発言に象徴されるように、アメリカ保守派の間では「トランス女子選手の女子競技参加は不公平」という意見が強くあります。
理由の一つは、生物学的な体格差や筋力の違いが競技成績に与える影響を無視できないというものです。特に短距離走や跳躍系の競技においては、テストステロンの影響が残る可能性があると指摘されています。

さらに近年では、「ジェンダー移行を望む若者の増加」と、それに伴う不必要な美容整形手術やホルモン治療への懸念も広がっています。
保守系の一部医療関係者からは、「SNSなどでジェンダーに関する情報が氾濫し、本来であれば身体的・心理的成長を見守るべき時期の若者が、早期に医療処置へ進んでしまう危険がある」とする声も上がっています。
アメリカでは小学校の授業でLGBTQについて教える州もあり、判断力が確かでない子供を惑わせるという指摘もあります。
トランス当事者と支援者の声
一方で、ヘルナンデス選手自身や支援団体は「これは差別であり、いじめだ」と反発しています。
支援団体「Trans Family Support Services」の代表は、「たった一人の高校生を、政治家が名指しで攻撃するのはおかしい。これは子どもに対する公然としたいじめだ」と訴えました。

また、ヘルナンデス選手は過去のインタビューで、「他人の意見を変えることはできないから、自分の競技に集中している」と話しており、外野の騒音に惑わされず努力を続けている姿が支持を集めています。
大会会場では、彼女を応援する教師や保護者が横断幕を掲げ、「ヘルナンデス選手はルールに則って出場し、堂々と勝利を収めた」と擁護しました。
スポーツの「公平性」と「包摂性」の両立は可能か
日本では、スポーツにより社会的・政治的な対立が表面化することなどなく、まったくの対岸の火事という感じです。しかし、女子の立場で考えると、男子の参入により自分が選手に選ばれないとか、大会に出られないという現実的な影響があるので、大きな問題であることは確かです。
特にオリンピックなどスポーツの頂点を目指すレベルともなると、結果がすべてなので男性ライバルが突然現れるという状況は、影響大であること間違いありません。
トランプ大統領の就任後、アメリカの文化的、民族的、政治的な対立が急速に顕在化しました。その影響は世界に波及しています。

リベラルの思想は、ジェンダー観に限らず、家族の形態(両親は異性カップルでなくても良い)など、保守の望む伝統的な家族感や価値観を脅かすものです。両者が納得する落としどころはなく、今後も平行線で進んでいくのでしょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。