なぜ健康は政治問題になったのか?MAHAが突く食品・医療・規制の構造

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健康はなぜ“政治問題”になったのか

最近、アメリカでは「健康」が政治の中心テーマとして扱われるようになっています。かつては個人の生活習慣の問題とされていたものが、今では食品、環境、医療制度といった社会全体の構造と結びついて語られるようになりました。

その背景には、慢性疾患の増加があります。CDC(アメリカ疾病予防管理センター) によると、アメリカでは成人の約6割が慢性疾患を抱え、肥満率も約40%に達しています。

こうした状況に対し、「なぜここまでアメリカ人の健康が損なわれたのか」という問いを投げかけているのが、現厚生長官のロバート・F・ケネディJr.氏のMAHA(Make America Healthy Again)です。

食品・消費・産業がつくった現在の構造

現在の食環境は、メーカーと消費者の双方の選択によって形成されてきました。

メーカーは利益を追求し、より安価で安定供給できる食品を開発してきました。一方で消費者もまた、忙しい生活の中で「手軽さ」や「すぐに食べられる便利さ」を求めてきました。

かつては地産地消だった食生活は、科学技術の進化とともに変化したとも言えます。冷蔵技術の発明とともに、消費者は大量の食材を買い置きするようになり、メーカーは消費期限の長期化を競いました。

企業は投資家からのプレッシャーにより利益追求を余儀なくされ、低栄養の超加工食品は更に拡大したという構図です。(私が食品メーカーは、株式上場すべきではないと思う最大の理由がこれです)

ただし重要なのは、その結果としてどのような変化が起きたのか、という点です。

かつてアメリカが輝いていた時代

その昔、アメリカには健康的なイメージがありました。この感覚に共感する人も少なくないのではないでしょうか。

1980年代には、カリフォルニアを発祥にフィットネスブームが広がり、身体を鍛えることや健康的な生活が一つの文化になっていました。

引き締まった体やアクティブなライフスタイルは、映画やスポーツを通じて世界に発信され、多くの人にとって憧れの存在でした。1986年のトム・クルーズ主演の「トップガン」の世界的大ヒットは、その象徴とも言えるでしょう。

その他、アーノルド・シュワルツェネッガーシルベスター・スタローンなどの活躍も、健康的で強いアメリカのイメージを世界に宣伝しました。筋肉増強のためにプロティンを摂取する、という習慣もアメリカ発祥でした。

当時のアメリカは、単なる経済大国ではなく、「健康」や「活力」といったイメージでも世界をリードしていたと言っても過言ではありません。

MAHAの主張:シンプルな食事への回帰

MAHAの特徴は、極めてシンプルな提案にあります。それは「加工されていない食品に戻る」というものです。卵、肉、魚といった、できるだけ自然に近い形の食材を摂ることを推奨しています。

また、マイクロプラスチックや化学物質といった環境要因にも目を向け、健康問題をより広い視点で捉えようとしています。

US EPA(アメリカ環境保護庁)がこうした問題への監視を強めていることも、時代の変化を示しています。

MAHAは対症療法ではなく、「なぜ不健康な身体になったのか」という構造そのものを問い直し、改善を求める活動であることがわかります。

医療と規制の構造はどうなっているのか

健康問題を考えるうえで、医療と食品規制の構造も無視できません。アメリカでは医療費がGDPの約18%を占め(約670兆円・日本は約45兆円)、医療は巨大な産業となっています。

また、食品と医薬品の両方を管轄するFDA(米国食品医薬品局)の判断は、しばし消費者の混乱を招くことがあります。国が食品と医薬品の販売を許可し、その結果不健康な国民が増えているのですから。

この仕組みは効率的でもありますが、一方で「予防」と「治療」のバランスが十分かどうかについては議論の余地があります。

元々この構造はWHO(世界保健機関)が提唱するものですが、世界各国でも同様の課題を抱えています。そしてついにトランプ政権は、今年1月にWHOからの脱退手続きを完了しました。

それまでアメリカは、WHOに年間160億円を支出していたそうです。しかし今度は、分担金約410億円の未払いを払えとWHOから要求されているそうです(寒)。

ケネディ長官とMAHAへの評価は分かれている

こうしたアメリカの動きは、ケネディ長官の功績によるものであることは間違いないでしょう。ところが彼に対する評価は分かれているそうです。

ワシントンポストの調査では、MAHAの考え方に共感する人は約4割程度にとどまるとされています。特にワクチンに関する過去の発言などから、彼の主張全体に懐疑的な見方をする人も少なくありません。

Photo: EPA

一方で、超加工食品や環境中の化学物質に対する懸念については、政治的立場を超えて大多数の共感を得ています(KFF2025調査)。つまり、「人物への評価」と「問題意識への共感」が一致していないのが現状です。

ケネディ長官は若い頃、麻薬所持で逮捕され、依存症との闘いなど、政治家としては異色の経歴を持ちます。その後、改心したかのように環境問題や子どもの健康被害、特にワクチン接種に異を唱えてきました。

一種、変人扱いされている部分があるのでしょう。

健康問題はどこに向かうのか

アメリカの健康問題は非常に複雑な要素が絡み合っています。

メーカーは利益を追求し、消費者は利便性を求める。その中で現在の食環境や生活スタイルが形づくられてきました。マイクロプラスチックの問題も含め、責任は一方向ではなく、社会全体に広がっています。

だからこそ、健康が政治問題として議論されるようになったのかもしれません。そのベースには、そこから回復を目指そうとする個人の声があり、それがムーブメントとなったのだと思います。

MAHAが問いかけているのは、「何を食べるか」という個人の選択ではなく、「どのような社会システムを選ぶのか」という、より大きなテーマです。

まだ規模は小さいですが、日本の社会システムに疑念を抱く人も増えてきています。アメリカは常に良くも悪くも、常に世界のお手本だなーとつくづく思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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